FINAL FANTASY XIV SS

FINAL FANTASY XIV を舞台とした創作小説です。

第八話 「戦斧を砕く剣風 其の二」

私はオスェルからもらったリストを参考に雨が降る日を待った。この時期は雨期にも近く条件が重なる日にあたるまでそれほどかからなかった。本来ならばすぐ駆けつけられるようスコーピオン交易所で待機していたいところだったが「見慣れない冒険者が居座っているところを銅刃団に不審に思われると厄介だから」とウルダハで待機しているようオスェルから言われていた。なにか変化があればこちらに連絡をよこしてくれるらしい。

ウルダハの宿を出てふと空を見上げると、どんよりと暗く分厚い雲が覆っている。今日はたしかシルバーバザー行きの交易便が出る日だったな。何か予感めいたものを感じていたところに一人の少年が私の元へと駆け寄ってくる。

「あなた、オスェルの言っていた冒険者さんですよね!」

そうだと答えると、

「よかった! オスェルさん「ちょっと存在感の薄い四十代の地味な冒険者」って情報しかくれないからどうなるかと思ったよ!」

・・・・・。

オスェルもオスェルだがたったそれだけの情報で自分と特定した少年も少年だ。自分はそれほど地味なのだろうか・・・・っていうかまだ30代だし。周りを見渡すと豪奢な装備に包まれた若く顔立ちの整った美形の冒険者達がウルダハの街を闊歩している。その中において一般人と変わらないほど地味な私は逆に目立っていたのかもしれない。若干ショックを受けて凹んだ私のことはお構いなしに少年は、

「オスェルさんからの伝言です! なんか今日の朝から銅刃団の人の様子がおかしいみたいなんです。落ち着かないというかなんというか。シルバーバザーに向かおうとする人に今日は雨だからやめておけとか言っていたり往来する人を監視しているような感じでピリピリしてるって。」

少年の話を聞くや否や、私は急ぎ宿へと戻り装備を整えて再び表へと出る。あっけにとられる少年に一言「ありがとう」と告げ、私はスコーピオン交易所へとむけて走った。

私はスコーピオン交易所を迂回するように周り、シルバーバザーとの街道が一望できる岩山へと陣取る。普段は遠くからでも聞こえてくるスコーピオン交易所の喧騒も、今日に限っては雨の音にかき消されて聞こえない。
しばらく待機していると一台のチョコボキャリアが視界に入る。不用心にも護衛などはついてはおらず、雨の中を先を急ぐようにチョコボに鞭を入れながら走っていく。そのキャリアを止めるように一人の男が草陰からふらふらと歩き出し、街道の真ん中に立ちふさがった。

黄色いバンダナを巻いた、ルガディン族の大男。

(アイツだ!!!)

私はダッと駆け出しその場へと急ぐ。私が到着したころには交易便の荷馬車は横倒しに倒れ、商人も逃げ出した後だった。しかし斧術士の男は何かをぶつぶつと呟きながら、散らばった物品を漁っている。男は私の存在に気が付き確認するようにギラギラとした目で私を睨み付けてくる。

「なんだアルディスじゃねぇのかよ。ちっ俺も軽く見られたもんだぜ・・・」

男は私があの時いたもう一人の男ではないと分かると、がっかりしたように脱力する。

(正体が分かった途端、逃げ出した奴が何を言う・・・)

「炙り出してやっと出てきたのがお前みたいな半人前たぁ、俺にもヤキが回ったなぁ。アルディスのせいで俺は傭兵団を追い出された挙句、今じゃ権力者の飼い犬さ。そんでもあの野郎に復讐ができると聞いてここまで気張ってきたんだがな。」

斧術士の男は空をぼーっと眺めながらぶつぶつと呟いている。正直逆怨みもいいところだが、正常な思考を失ったこの男に何を言っても無駄だろう。私は剣を抜き斧術士に対峙する。

「はっ? 雑魚野郎のくせに、俺に勝てるとでも思ってんのか?」

男は自分を見下すような目をしながら、不気味な笑みを浮かべた。

「まぁいいや・・・お前を殺せば今度はあいつが出てくるかもれねぇしな。俺の復讐のために、せいぜい死んでくれやぁ!!!」

斧術士の男は背負っていた斧を手に取ると、力任せに振り回す。私は冷静に間合い取りつつ男の出方をうかがう。

「なんだなんだぁ・・・随分とビビってんじゃねぇかぁ。怖い思いをしたくねぇなら、大人しくしてりゃすぐに殺してやんよ!」

私が自分を恐れていると感じたのか男は間合いを詰めるように乱暴に飛び込んでくる。隙だらけではあったがそれをカバーするほどの強撃を打ち込んでくる。

ギイィィィン!!

甲高い音が周囲に響き渡る。私は渾身の一撃を何とか受けきる。体が軋むほどの圧力、しかし私はそれを力で押し返す。

ウォォォォッ!!!

斧を跳ね返された斧術士は驚きの表情を浮かべながら大きくバランスを崩した。私はその隙を見逃さず一気に詰め寄り懐めがけて一撃を放つ。しかしそれを予想していたのか男はひらりと私の剣撃をかわし、にやりと笑う。

「あぶねぇあぶねぇ・・・俺じゃなけりゃ今のでヤラれてたかもしれねぇなあ・・・だが、これはどうかなぁ?」

男は大きく息を吸い込み、体勢を落として斧を深く構える。

ダラァァァッ!!

男が大きく咆哮を上げた瞬間、まるで曲げられたバネを一気に解放したような勢いで斧を振るう。一気に打ち出された一撃は衝撃波を伴なって私に迫りくる。とっさに盾を前に出しその衝撃からなんとか身を守る。しかし視界が切れた一瞬を狙って男は二撃目を放ってくる。横に薙いだ斧を何とか盾で防ごうとするが、不十分な体勢では体重の乗った一撃に耐えきれるわけもなく、その一撃と共に私の体は大きく吹き飛ぶ。

(ぐっ・・・)

倒れこまないよう何とか踏みとどまり、すぐに男に向かう・・・が男はすでに体を回転させて斧を振り回し、遠心力によって力を上乗せした一撃を私に放っていた。私は強引に体を捻り、一撃を間一髪のところで躱したものの、体勢を崩して地面に倒れこんだ

ヒ・・・ヒヒヒッ!!

無様に地面に倒れこんだ私をみて、男は不敵に笑う。追い打ちをかけてこないところを見ると完全に勝利を確信したのだろう。

やはり一筋縄ではいかないか・・・

私はゆっくりと立ち上がり改めて剣を構え直す。

「まだやるのかぁ? そんなへっぴり腰じゃあこのファルムル様には勝てねぇよ。お前と遊ぶのももう飽きたからさっさと終わらせてやるぜ!」

男は相変わらずの大振りで一気に攻め込んでくる。連撃に持ち込まれたらさすがにまずい。

まずは足を止めないと!

剣術もそうだが武術の基本は足にある。体重を乗せ溜め込んだ力を瞬発的に開放するためにはしっかりと地を踏みしめ、踏ん張りを効かせなければならない。幸いなことに斧術士の男はあまり防御を考えていないうえ動作も大きく隙は多い。攻撃をうまく掻い潜って懐に潜り込めれば勝機はある!

斧術士の一撃をギリギリのところで躱しつつ、胴体ではなく足を狙って剣を振るう。

ガンっ!

打ち込んだ一撃は男の防具に弾かれる。

「ははっ!! 弱い! 弱すぎるぞ!!」

余裕そうに男は再び斧を自在に振り回す。私はギリギリで男の一撃一撃を躱しつつ何度も何度も男の足を執拗に狙い続けた。男は私の攻撃が追い込まれているうえでの悪あがきと思っているのか、足ばかりを狙っていることに対してなんの疑問も感じていないようだ。しかし積み重ねた攻撃によりいつしか男の動きは鈍りはじめ、踏ん張りの聞かなくなった男の一撃も軽くなる。私の剣撃は男の防具に阻まれていたが、何度も重ねられた攻撃は打撃となって男の足に確実にダメージを蓄積させていたのだ。

「ちっ・・・小賢しいクソがぁ!」

足が止まってしまえばこちらのものだ。私は息を整え今度は防御から一気に攻撃へと転ずる。

ハアァッ!!

一撃目は斧で防がれないようにわざと浅めに放つ。狙い通り男は私の攻撃を体を動かして避ける。すかさず放つ二撃目。私は大きく踏み込み男の体に盾ごと当て身をして体勢を崩す。足が弱っている男は踏みとどまることができず後ろに大きくよろめいた。三撃目は足。踏ん張りを失った男の足に追い打ちとばかりに打撃を加える。弱った足に再び打撃を受けて、男の体は完全にバランスを崩す。そして4撃目。よろめいて防御もままならない男の顔面めがけて私は思いっきり盾を投げつけた。

ガツッ!!

「がふぁっ!!」

盾とはいえど重量物で顔面を殴打された男は、そのまま気を失って地面へと倒れこんだ。

はぁっ・・・はぁっ・・・

私は男が動かないのを確認したうえで、男の斧を拾い遠くに投げ捨てる。そして私は男の両手を背中に回し両手首を紐で縛った。さらに両足首も紐で縛り完全に拘束した。すべての作業を終えて、私は斧術士の男から少し距離をとった場所にドサッと座り込んだ。

終わった・・・・

降りしきる雨はさらに強くなり疲労で脱力する私の体を容赦なく打つ。
闘いの高揚感は雨に流されるように冷めていき、冷静さを取り戻した私は改めて斧術士の男をみた。

なんて・・・・・醜い闘いだったんだろうか・・・・

闘いに綺麗も汚いもない。生きて立っていたものこそが正しいのである・・・だが、

クイックサンドでの一件以来、私はたくさんの努力と経験を重ねてきた。それでもこの男に実力で追い付けたのかどうかはわからない。それほどまでに相手は闘う前から自分を見失っていた。

そして何より、私は人を殺めるという行為に躊躇したのだ。

実のところ斧術士の初撃を躱し打ち込んだ一撃はしっかりと急所をとらえていた。しかしその時、突然頭に浮かんだ「人を殺めてしまうかもしれない」という恐怖によって打ち込みが甘くなり斧術士に避けられてしまった。その後覚悟の甘さによって自分の命を何度も危険にさらしてしまった。なめてかかれる相手ではないと分かっていたのに。終わってみれば、なんとも無様な決着であった。

お世辞にも正々堂々・・・とは言えないよなぁ・・・・

男を殺さずに止めるには、防御の甘い頭部を狙う必要があった。しかし剣では狙いにくく、殺さないように打ち込みを甘くすればまた避けられる可能性もあったため、攻撃範囲の広い盾を使って男の頭を殴打したのだった。

「こんな闘いをセラに見られていたら何を言われていたんだろうな・・・」

ははっと溜息にも似た乾いた笑いがでる。闘いには勝ったものの自分の気持ちを整理できるような戦いではなかったことを改めて実感する。

 

ご苦労だったな。

突然声をかけられ、振り向くとそこには一人の男が立っていた。

 

 

 

闘いを終え放心状態だった私は後ろから近づいてくる気配に気が付かなかった。私はあわてて立ち上がり剣に手を添えて警戒する。服装を見ると銅刃団のもののようだ。目元は顔当てで覆われていて人相はわからないが、露出した口元を見る限り自分と同じヒューラン族のようだった。

「こいつがここ最近シルバーバザー行きの商人を襲っていた襲撃者か?」

そういいながら足元に倒れている斧術士を足で乱暴に蹴飛ばし、顔を確認するように覗きみた。

私は頷きながらも警戒は解かなかった。確証があるわけではないもののこの斧術士の男に商人を襲わせていたのは銅刃団・・・・いや、正確に言えば銅刃団を支配しているロロリトだろう。

(そういえば斧術士の男も洩らしていた・・・俺は権力者に飼われていると)

私は無言で銅刃団の男を距離をとる。私が警戒していることに気が付いた男は、

「まてまて! そんなに警戒するなよ!  俺はさっきスコーピオン交易所に逃げ込んできた商人から報告を聞いて現地を確認しに来ただけだよ。お前をどうこうしようなんて思っちゃいない。」

そう言いながら男は両手を上げて敵意はないことをアピールした。それでも私はこの男を信用ができない。オスェルは銅刃団の様子がおかしいと言っていた。

シルバーバザー方面の往来を減らすかのような行動。それは斧術士の男が商人を襲いやすいよう「人払い」をしていたのではないか?

なぜ商人がシルバーバザーへ行くのを止めなかったのか?

それは、斧術士の男に襲わせるためだったのではないか?

それは銅刃団自体がこの件にかかわっている、紛れもない証拠ではないのか?

だとすると、この男は何をしにここにきたのか?

飼い犬である斧術士を倒した私への報復? 口封じ?

私は剣に手を置いたまま二歩三歩と後ずさる。銅刃団の男からは殺気を感じないものの剣を交えていない以上相手の実力を推し量ることはできない。さらに警戒感を強めた私を見て、

「参った参った! じゃあ正直に話そうか。お前のことはワイモンドから聞いていたんだ。シルバーバザーの件に首を突っ込んでて斧術士退治を依頼されてるってね。だから悪いとは思ったがしばらくツケさせてもらっていたんだよ。この格好はいろいろと便利でね。顔も隠せるし全員似た様な風貌になるからぶらぶら歩いていたって不審がられない。銅刃団にはいまいち統率ってのが無いからね。誰がどこにいようとあまり気にしないのさ。」

男は自分の格好を見せびらかすようにおどけて見せる。

「ワイモンドだけでなくモモディやパパシャン先輩までもが一目を置いている男だ。そんなお前を信用して話すが、

俺は王党派から銅刃団に送り込まれている斥候なんだ。

俺は銅刃団に入って内側からロロリトを初めとする共和派の動きを探っている。ウルダハには砂蠍衆(さかつしゅう)と呼ばれる代表組織があってな、そこはナナモ女王陛下に忠誠を誓う王党派とロロリト他有力商人からなる共和派と二つに分かれているんだ。まぁ実際のところ国の経済の実権を握っているのは共和派だが、ウルダハの軍隊ともいえるグランドカンパニー「不滅隊」を率いるラウバーン局長が王党派であることと、なによりナナモ女王陛下の圧倒的な国民人気もあって表向きは王政となっている。ただそのことが共和派にとってはたいへん邪魔らしくてね。あいつらは財界を牛耳るだけではあきたらず、名実ともにウルダハの頂点をねらっているのさ。

先日シルバーバザーの頭目がウルダハに陳情に来たんだ。ナナモ女王陛下に直接会って、シルバーバザーのおかれている現状を訴えたいってね。もちろん正式な申請のない謁見は禁じられているからお断りしたよ。ただでさえナナモ陛下を狙うドブネズミ共の影がちらついているんだ。防犯の面でも特例はありえない。
ただナナモ女王陛下はシルバーバザーの惨状はどこからか耳にされていたらしく、いたく心を痛めていたんだ。王党派としてはナナモ様のご意向によって力を貸したいところだったのだが、その原因が共和派のロロリトにある以上国王として動くことは余計な対立を生むだけ。
そこで王党派は俺みたいな斥候を銅刃団に送り込んで情報を集め、情報屋に流していたんだ。情報を流していれば、いずれ救おうとする者が現れると信じて。

で、引っかかったのがお前さ。」

男は私のことを指さす。

「だが俺もシルバーバザーの実情を知るにつれてあまり乗り気にはなれなくなってね。
このまま潰れちまったほうが住人のためではないか? そう思えるようになってきてたんだよ。お前も散々見たんだろう? シルバーバザーの実情をさ。キキプ女史は一人奮戦してるが、他の住人達ときたらどうだ?既に諦めちまっている連中ばかりで、嫌ならさっさと出てけばいいのにグズグズ文句を言いながらも現状にしがみついているクズ共ばかりだ。悲劇の住人を語るばかりで何もしようとしない。そんな町を救うために自分たちが蒔いた種で、勇気ある冒険者を死に巻き込むわけにはいかない。

そう思ったから、私はここにいるんだよ。

薄々感じていたとは思うがこの斧術士の飼い主はロロリトだ。ロロリトはこいつにシルバーバザー行きの商人を襲わせて、交易自体を破たんに追いやろうとしていたんだよ。無様なもんだよな。自業自得とはいえ嘘の話に乗せられて利用されるなんてな。まぁ結果的にこの男が起こした襲撃事件はかなりの効果を上げていて、シルバーバザーの唯一の商売はほとんど壊滅状態に追いやられてもう時間の問題なんだよ。
でだ、実はこの男もう用済みになったらしくて、銅刃団に排除命令が出てたんだよ。だから人払いをしたうえで商人をおとりに斧術士を釣っていた。そこにお前がしゃしゃり出てきてしまった。後はもうわかるな?
あんまりキョロキョロするなよ。ここの周りには5~6人の銅刃団が隠れてこちらの様子をうかがっているんだ。不審に思えば一気にとびかかってくるぞ?」

私の体が緊張で固まる。

「一つ確認だが、結局こいつは殺してないんだな?」

私は首を縦に振る。

「ふむ、なら後の処理は俺に任せてくれないか? こんなやつ、お前の手を汚すもんでもないだろう。どの道こいつは今殺さなくても銅刃団によって闇に葬られる。まぁお前がこの男を救いたいと思うのだったら、話は別だがね。」

私はこの男を殺すつもりはなかった・・・というよりそもそも殺すということを考えていなかった。もしこの場にこの男が現れなかったとしたら、私は斧術士の男の始末をどうつけていたのだろうか?

私は静かにうなずいた。

「よし。他の銅刃団の連中には商人が襲われているところにたまたまお前が通りかかって拘束し、銅刃団に引き渡そうとしていたってことにしよう。だから聞かれてもお前は余計なことを一切しゃべるなよ。 ほれ一応報奨金をやる。身柄の引き渡しは金で成立。いいな?」

男は私の手にギル袋を手渡してきた。ずっしりと重い。いったいいくら入っているのだろうか?

「さて、ここからは私からの忠告だ。今後一切シルバーバザーからは手を引きな。あそこにかかわってもお前にとって何一つ得にならない。特にロロリトに目をつけられてしまえば、冒険者としての人生は終わり。そこらへんにある貧民キャンプで一生希望のない生活を送ることになるぞ。それと今一つのうわさが飛び交っていてな。

腕の立つ剣術士の男が、ロロリトの計画を邪魔をしている

まだそれが誰のことなのかははっきりしていないようだ。お前のことかもしれないし、他の誰かかもしれない。だが危険な状況であることには変わらない。残念だがいつの時代でも「悪意」は「善意」より勝るんだ。それに巻き込まれないよう注意しな。」

男の忠告は、私の心を見透かしたように、内でくすぶる疑念を的確に突いてきた。男は私にシルバーバザーへもスコーピオン交易所へも行かず、ウルダハに戻るように指示してきた。どうやら「私の関与を疑われないための配慮」とのことだった。斧術士を退治したことはキキプにもオスェルにも連絡してくれるらしい。確かに心に大きなわだかまりを残したままキキプに会うことはできない。私の反応で彼女は察してしまうかもしれない。私がシルバーバザーのあり方に疑問を感じてしまっていることを。

もう救う手立てはないのか?

結局何一つ解決しないまま、私はウルダハへ帰路に着いた。