FINAL FANTASY XIV SS

FINAL FANTASY XIV を舞台とした創作小説です。

第三十七話(外伝) 「ララフェルの少女」

聞いて・・・・・・感じて・・・・・・考えて・・・・・・


頭の中に響き渡る声・・・

またこの夢だ・・・

私は大きなクリスタルの周りを、何をすることもできずに只々浮遊し続けている。


聞いて・・・・・・感じて・・・・・・考えて・・・・・・


うるさい・・・


耳を塞いでも、聞こえてくる声に辟易する。


聞いて・・・・・・感じて・・・・・・考えて・・・・・・


うるさいっ うるさいっ


私と同じように浮遊する冒険者たちは、大いなる意思に導かれるように光の中に消えていく。


聞いて・・・・・・感じて・・・・・・考えて・・・・・・


うるさいっ! うるさいっ! ! うるさいっ!!!


その中で、私だけが時が止まっているかのように動かない。


これは何の罰だ?

これは何の呪いだ?

これは何の・・・・


私は顔をくしゃくしゃにしながら精いっぱい叫ぶ。
しかし、声さえも出すことが出来ない。
喉から空気が漏れるだけ・・・・

現実で絶望を突きつけられ、夢の中でなお一人取り残される。

聞きたくもない「雑音」を繰り返し聞かされながら、


私は出ることの出来ない「牢獄」で、今日も一人叫び続ける。

 


おいっ!!!

「ズンッ」という衝撃で体が歪み飛ぶ。
外部から与えられた強い痛みによって、ブツッという音ともに現実へと引き戻される。

かはっ! ぐあぁ・・・・ げほっ! げほっ!!

腹部に強い痛み・・・どうやら私は、腹を思いっきり蹴られたらしい。

嗚咽を誘発するような気持ち悪さで喉がえずく。
必死に痛みをこらえながら、私を蹴った男を見る。


こんなところで寝てやがるとは、しつけが足りなかったか!?


ルガディンの男はぐりぐりと私の顔を足蹴にする。
体格の大きいルガディンに踏まれ、顔の骨がみしみしと歪むのがわかる。


あぁ・・ぐぅっ・・・・あぁっ!


そこまでになさい・・・・やり過ぎですよ。


聞きなれない声・・・
ぼやける視界の中で、私を踏みにじるルガディンの男の他に、ララフェルの男が立っているのが見えた。


・・・・なんだあんたか。


ルガディンはその男の姿を確認すると「チッ」と舌打ちしながら踏みつけていた足を私からどける。
そして、ララフェルの男に対してイラついた表情をしながら、


こっちのやり方に口出ししねぇでもらえるか?
こいつは俺らのペットであり道具だ。
躾が足りてねぇから躾し直しているだけだ。
それによ・・・


そう言ってルガディンの男は、倒れている私のローブの中を弄り、一本の瓶を取り出した。


こんな大事なもん抱えているのに寝てやがったんだぜ?
この程度の「お仕置き」で済んでるだけましだろうが。


と言って、その瓶を男に渡す。
ララフェルの男はその瓶を受け取ると、それが本物であるかどうかを確認した上で「確かに」と言いながら懐にしまいこむ。


では、取引は成立ということで。
あなたの頭領にお伝えください。
報酬のお支払いは打ち合わせ通りに。

チッ・・・・了解だ。
しかし、あんたほどの人物が出てくるとはな。
まぁこっちにとっちゃ渡りに船だったが。
あんたがいなきゃタダ働きになっていたところだ。
でもいいのかい?
こんな破格な報酬を俺らに約束して。
その薬は今となっちゃああんまり価値のないものなんだろ?

ふふ・・・
こんな骨董品でも、使い方によっては色々と取引材料になるんですよ。

王宮内の「宝殿」から盗まれたもの。

物の価値よりも、その事実こそが大事なのですから。


ルガディンの男は眉をひそめる。


あんた・・・あそこで死んだ男とおんなじ思考してるんじゃねぇのか?
こんなまどろっこしいことしてねぇで、力でねじ伏せればいいものを。

失敬な・・・あんな無能な連中と一緒にしないでもらいたい。


ララフェルの男は不快そうに顔を歪める。


・・・・悪かったよ。
俺もこのまま何もなしで帰ったんじゃ、命の保証もなかったしな。
人を操る「言霊」ってやつには興味があったが、今となってはそれも望めねえし。

別にそんな不確定なものに頼らずとも、我々が支払いを約束する「金」で釣ったほうが
確実かと思いますがね。

ちがいねぇっ!!


ルガディンの男は合点が言ったように高笑いをする。
ララフェルの男はルガディンの男から目を背けると、地面にうずくまったままの私のことをじっと見てくる。


それにしても・・・
そちらの子供、もしあれでしたら私が高く買いますよ?
あなたのところにいたんじゃ、簡単に命を落としてしまいそうだ。


ルガディンの男から笑顔が消える。

それはだめだ。
こいつは非売品。どんだけ金を積まれても売り飛ばすつもりはねぇ。
さっき言ったはずだ。こいつは俺らのペットだってね。
金でどうこうできるような、奴隷じゃねぇンだよ。

それにこいつはあんたには躾られねえんだよ。
こいつは絶対的な絶望と、逃げるという選択肢を潰せなければ扱えねんだよ。
ちょっとでも甘やかしてみろ。
すぐにでも寝首をかかれちまう。


そんなこと・・・こっちにとっては専売特許なんですけどねぇ・・・
死んでしまったらその貴重な原石は無駄になるというのに。
「生かさず」「殺さず」で扱うには幾分雑すぎるように見えるのですが。

ララフェルの男はそんなことを呟きながらも、残念そうに首を横に振る。


心配にはおよばねぇ。

だってこいつ、

体がバラバラになっても死なねぇんだ。


その言葉を聞いてララフェルの男は驚いた表情をする。
しかし、すぐに表情は曇り、ルガディンの男には聞こえないような小声で、

道具・・・・ね。

と、意味ありげに呟いた。