FINAL FANTASY XIV SS

FINAL FANTASY XIV を舞台とした創作小説です。

第七十話 「決意・旅立ち・そして別れ」


うはっ!
すげえなありゃ!!

俺は目の前で起こった光景に思わずテンションが上がる。
今まで感じたことの無い圧倒的なエーテルの圧力に、恐怖を通り越して一種の「憧れ」に近い感情が沸きあがった。

見たことの無い幻獣。

いや、あれは幻獣というよりはむしろ蛮神に近い。
体躯こそ小ぶりではあるものの、その内に溢れるエーテルは幻獣のようなちんけな存在とは全く違う。

あれが召喚獣ってやつか。

制御を失い、主であるガキを飲みこもうと迫る召喚獣
「光の加護を受けし者」として、その身を挺して守る冒険者。
その力比べのようなせめぎあいは、ガキの内に眠っていた「誰か」の手によって終止符が打たれた。

もう何が何やらわからねぇが……
最高のショーだったぜ!!

顔のニヤニヤがおさまらない。
ガキの頃に荒野のど真ん中に捨てられ、盗賊団に拾われて奴隷まがいな扱いをうけ、帝国施設への襲撃に失敗して囮としてまた捨てられて、また奴隷まで身を堕として。
そんな糞みたいな人生だったが決して神様を恨んじゃいない。
神様は俺にガイウス閣下を引き合わせてくれた。

最高のプレゼントだ!

あの人は最高だ。武人としても、私人としてもだ。
理想の為には手段を選ばないが、あの人が目指しているのは蛮神の殲滅であり小競り合いの絶えないエオルゼアの救済だ。

人は支配されることを嫌うが、支配から解放されてもまっているのはよりひどい混沌しかない。
支配から逃れるためには、より強い支配で縛られなければ国の安定などありえないのだ。

どういう理由・立場にせよ、人の人生に関われるというのは楽しいこと。
自分のちょっとした行動一つで大きく狂いもする。
いわば俺は脚本家であり、演出家でもある。
ガイウス閣下が掲げる理想の為、人を動かし、演じさせる。
そこで生まれる悲哀を見ることが、何よりも楽しいのだ。

まぁ最後の最後、エキストラであるはずの冒険者共によって、一番大事なところでしくじってしまったがな。

それでもとりあえず目的の一つは達成できたといえるだろう。

それにしても……

目を潰すほどの光が放たれ、一瞬にしてあれだけの強い力を解放されたにも関わらず、崩落してもおかしくはない洞窟の中は元のままだ。
どうやら駆けつけた奴らの中にいた幻術士の女が張ったバリアによって何とか抑え込んでいたようだ。

あの女、侮れねえな。
たしか…シャーレアンから派遣されたバルデシオン協会の奴だったか?
シャーレアンといえば失われた学問・技術を目指す学術都市国家。とすると古代アラグ文明の神秘の一つを紐解いたのか?

どちらにせよ、これだけの規模の洞窟が崩壊すれば、劇の結末を見るどころの話じゃなくなる。
ここはあの女に感謝しておこう。

さて……これからどうするんだい?
あのガキを回収するかい?

俺は横に佇んでいる商人の男に声をかける。
あのガキの存在をこちらに伝え、ここまでの手引きをしてきた「正体不明」の商人。

人の形をした存在なき存在。

えにしより混沌を呼ぶもの「アシエン」と呼ばれたそいつは、いつものように顔に柔らかな笑みを浮かべながらこちらの質問に答えた。


まぁ回収してあげたほうがあの子のためではありますね。
見てください。あの後ろに控えるその他大勢たちの顔。

恐れ、憎悪、戸惑い
そして研究材料としての好奇。

向けられているのはすべて「負」の感情です。
あの子の存在はすでに人ではなく、化け物と一緒です。あの子を守ったあの二人以外は。
これだけのことを起こした彼女が、そんな彼らに保護されて幸せになれると思いますか?

…あり得ねえ話だな。

蛮神ともいえるあれだけ強い力を持っているという存在というのは、長年保ってきた各国のパワーバランスを著しく狂わせる。

とすると、始まるのは争奪戦かい?
それはそれであんたの思惑通りじゃねえのか?

「混乱をもたらす」という点では彼女の存在はふさわしい。

でも、

今の彼女は空っぽです。

中身の注がれていない器には何の価値もない。
ただ外から眺め見るだけの嗜好品です。
結局「持っている」というだけの張ったりにしか使えません。

ならどうするんだ?

ふふっ…空っぽの器に意味はない。
でも、あの器はまだ壊れていない。それどころか、今回でかなり大きくなった。
空っぽならば、新しいものを注いでやればいい。それだけですよ。


商人の男が不気味に笑う。
まるで新しいおもちゃを見つけた様に、こいつもまた新しい「劇」の始まりに心を震わせているようだ。

……一つ聞くが、本国に「アレ」の参戦を中止させたのはあんたかい?
もしそうだったら表立って動くのを嫌うあんたが随分と大胆なことをするな。

歯車は回っているのです。
既に先行してラハブレアが動き出している。
彼のやり方を否定するわけではありませんが、あれでは面白みがない。
目的は達成するのが楽しいのではなく、

達成するまでの間を如何に楽しむかがとても大事ですからね。

……あんたらは一枚岩だと思っていたが、存外人とそれほど変わらねえな。


少しあきれ顔の私をみて、商人の男は心外そうに、それでもどこか楽し気に避難する。


個人の私利私欲のために同族に手をかけ、安定を望みながらもみずから積極的に調和を壊そうとしていく、頭の悪い君たちとは同じにしないでもらいたいですね。
我々は個にして同。多少やり方は違えど、共に目指す頂は一つしかないのですから。

……どこが違うかさっぱりわからねえが、あいつを回収した後はどうすんだい?

この地に住まう蛮神リヴァイアサンとタイタンは斃れた。
蛮族の彼らは再び神おろしを始めるでしょうが、サハギン族はテンパード化していない海蛇の舌本体を失い、さらにザナラーンからのクリスタル供給も断たれた。コボルド族にしてもクリスタルはあれど強い蛮神をおろすだけの信仰心が足りない。ではどうしましょうか?

残っているのはアマルジャ族の信奉する「イフリート」、シルフ族の信奉する「ラムウ」か?

あと、グリダニアにはイクサル族が信奉する「ガルーダ」がいます。
数からするとグリダニアに行った方がいいですが「ラムウ」はあまり好戦的ではありませんし、ガルーダは制御不能な凶神ですからね。
リハビリさせるにも少々荷が重い。

と、すると?

あの子を回収後に南ザナラーンに向かってください。
カルン遺跡の側に「灰の陣営」と呼ばれるアマルジャの集落があります。そこにはウ族の女もいますので、人が馴染ませるには適当でしょう。
撃ち捨てられた子供を見殺しにするようなものたちではないので。

では、まずはイフリートを神おろしさせて「喰わす」と?

はい。器にイフリートのエーテルが注がれれば、また彼女は覚醒できるでしょう。
でも、今回召喚した召喚獣はまだ弱い。
もし覚醒させるなら……

すべての蛮神を喰わせた後……てことか。

あなたは単純なようで理解が早いから好きですよ?

正体不明な奴に好かれても嬉しかないが、誉め言葉として受け取っておくよ。

では、あなたは自慢のキメラの放つ電撃攻撃で彼らを足止めしてください。
その内に私はヴォイドゲートを開き、妖異を出します。
彼らが混乱いているうちに、彼女を回収、そのままザナラーンに向かってください。

了解。
それと、あんたの心配はしないぜ?

心配するだけ無駄ですよ。
私は肉体の無い存在。あなたみたいな「星の加護」より便利ですからね。

は! じゃあ行くか!!

 

 

光と共に召喚獣が消え去った洞窟内は静けさに包まれていた。
中身がスッと抜け落ちた様に地面に倒れこんだ片目の少女の元に、ミリララは駆け寄って抱きしめる。
私はその光景をただ茫然と眺めていた。

終わった……のか?

命を燃やし耐え続けた体と精神は、既にボロボロだ。


相変わらずあなたは考えなしね。
守るこっちの身にもなってほしいわ。


後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
しかし私は振り向く気力もなく、ただ「あぁ…すまない」と短く答えるだけで精いっぱいだった。
どうやらまた私は、彼女に助けられてしまったようだ。


でも……お疲れ様。
あなたの働きは蛮神の討伐よりも誇れるわ。


初めて聞く優しい言葉と共に、体に一枚の布が被せられた。
どうやら装備のほとんどが消し飛んでしまったようだ。
私は「あれは…あれはなんだったんだ?」と幻術士の女に問う。


わからないわ。
でも、あれは彼女が呼び出した召喚獣だったのでしょうね。
幻獣とは次元の違うもの。自ら意思を持つエーテルの集合体。
まさにあれは、私たちが「蛮神」と呼ぶものそのものだったわ。


話を聞きながらも現実への理解がおぼつかない。
鈍る思考を必死に回転させながら、一つ一つのことを整理する。
片目の少女が異形の人型に呑まれた瞬間、光と共に一体の召喚獣が呼び出された。
しかし、意識を失った術者を食い殺そうとするように、その召喚獣は少女へと牙をむいた。
少女を守ろうと飛びついたミリララを守るように咄嗟に覆いかぶさったのはただの反射に近い。

でもなぜだろう……

自分はこの少女を守らなければならないとおもったのだ。

自分と同じ境遇だから?

いや、それは違う。

意思というよりはどこか「遺志」に近い。
私の中に眠る何かが、この少女を守ることを「使命」として伝えてくるのだ。

(少女に宿ったあれは一体……)

覚醒した少女に宿ったもう一人の少女、いや…あれは少女ではない。あれは多分私、そしてこの少女に背負わせた「宿命」のすべてを知る人物。

もしかして……ハイデリン?

考えを巡らせながら、ミリララに抱き留められている少女を見る。
その顔は安らかな表情で、年相応の可愛らしい寝顔で吐息を立てていた。


あなた、あの少女のこと何か知っているの?


幻術士の女は私に聞いてくる。
私は静かに首を振りながらも「わかっているのはあの少女もまた星の加護を受けた者であり、なんらかの宿命を背おわされていることだけだ」と答えると「そう…」と短く言葉を切った。
後から幻術士の女と共に駆けつけてきていた巴術士ギルドのギルドマスターが声をかけてくる。

とにかく、ヤ・シュトラ殿の協力をいただき広範囲のバリアを張ったものの、あれだけの衝撃がこの洞窟にダメージを与えているかわからん。今は早くここをでよう。
あとその少女は我々巴術士ギルドが引き取ろう。伝説の召喚士となれば我々としても興味がある。


そう言って巴術士ギルドのギルドマスターは少女を引き取ろうとする。
それを黒渦団の幹部らしき男が制する。


ちょっとまて。そいつは海蛇の舌の一員で数多くの同胞が手にかけられたのだ。あれだけの力を持つものが世に解き放たれれば混乱しか生まれぬ。ここで始末してしまう方がエオルゼアの安定のためになるのではないか。

ふざけたことを言うな。あれはまだ少女だぞ?
それに一から育て直しさえすれば、いずれリムサ・ロミンサにとっての強力な武器になる。我々の国が蛮神レベルの召喚獣を得る絶好の機会なのだぞ?
あれはガレマール帝国に対する究極の鉾であり、盾にすらなる逸材だ。
それをミスミス処理してしまうなど愚策も愚策。

だからと言って少女がこちらに従う道理はないだろう?
もしその者が本当に星の加護を受けた者であるのなら、力を失っている今どこか安全なところに幽閉してしまったほうがいい。
力を取り戻した瞬間、裏切られたら我々は一巻の終わりだ。
簡単にとれるリスクにしてはいささか大きすぎるぞ。


静かになった洞窟内に響き渡る二人の言い争いを聞きながら、ヴィルンズーンは呆れて声も上げず、や蛇の舌のアジトを捜索し終え、戻ってきた双剣士ギルドのジャックもどこか気まずそうな顔をしながら押し黙っていた。

正直反吐が出る。
なぜこの少女を一人の「人」としてみないのだ。
私、そしてミリララが命を投げ出してまで守ろうとしたもの。

その意味をなぜ理解しようとしない!


再び始まる人の醜さを見て怒りに震えている中、突然その場に雷撃が放たれた。

なんっ……だ……!!!

威力こそないものの広範囲に広がる雷撃によって体がマヒし、その場にいたすべての者の動きが封じられた。
そして身動きが取れなくなった私たちの目の前に、見たことの無い巨大な魔獣が舞い降りてくる。
獅子の体に竜と山羊。とても自然界で生み出されたものとは思えないほどちぐはぐな容姿に、思わず息をのむ。
そしてその異形の魔物の上では、黒い入れ墨の男が満足そうな笑顔を浮かべながらこちらを見下ろしていた。

!!?

同じく地面に手を突きながら、苦々しい顔でヴィルンズーンが声を上げる。


お前ッ!!
なぜ生きている!!?


その叫び声を聞きながら、黒い入れ墨の男は意気揚々と魔獣から地面に降り立ち、地面にひれ伏したまま動けない私たちを見下ろした。


ちょっとぶりだな諸君。
崖から飛び降りて死んだと思っていたようだが、残念だったな!
どんな場合でもちゃんと死体を確認するのは基本中の基本だぜ?


そう言いながら、黒い入れ墨の男は膝をついたまま動くことができないヴィルンズーンの元へと歩き、笑いながら足で頭を蹴り飛ばした。


さて、残念だがおまえらと遊んでいられるほどこっちも時間がねえんだ。さっさと用事だけをすまさせてもらうぜ?


そう言って黒入れ墨の男は、片目の少女を抱き留とめたまま固まっているミリララを乱暴に引き離し、壁に向かって投げ捨てた。

ぐぁ・・・・っ!

受け身をとることもできず、壁に打ち付けられたミリララはそのまま地面へと落ち、ピクリとも動かなくなった。
そして片目の少女を肩に担ぎ上げると、そのまま私の方まで歩いてくる。


こいつは俺のもんだからな。
返してもらうぜ?
なに、悪いようにはしないさ。
少なくとも、そっちにいる奴に拾われるよりはましな人生を歩める。
まあ…どういう人生を歩むかは、結局こいつ次第だがな。
それにあんたも味わっただろ?
所詮味方と思えば簡単に敵に回り、国の為といって子供を殺しく来るような奴らだ。
捕まったら最後、研究のおもちゃとして人生を終わらせるのか、ずっと地下牢に閉じ込められたまま悠久の時を生き続けるか。
はたまたあんたにさらわれて、ずっと日陰の中で暮らすのか。
どれをとっても先に待っているのは不幸しかねえんだぜ?
その点、俺らはこいつに自分で生きる道を与えてやるんだ。
恨まれる筋合いはないってもんだぜ。

さぁ、提示するのは「目の前だけの不幸」と「将来の終わりなき不幸」。
命を張って守り抜いたこいつのために、あんたはどちらを選択するんだい?こいつを守り抜いたお前には、ご褒美としてどちら側に回るかを選ばせてやるよ。

そう言って入れ墨の男は少女を担ぎ上げたまま魔獣につかまる。
その瞬間、私と魔獣を隔てるように黒い歪みが生まれた。

(ヴォイドゲート!?)

ふと私の体を淡い光が包んだかと思うと、しびれが回復して身動きが取れるようになった。
周りを見渡す限り、幻術士の女がエスナをかけたわけではなさそうだ。
ヴォイドゲートは広がったまま不気味にうごめいている。
いつもとは違い、中から何かが出てくる気配はない。

……選択の時……か。

私はゆっくりと立ち上がり、異形の人型の一人が持っていた地面に転がるオヤジさんの斧を拾い上げ、未だ身動きの取れないヴィルンズーンの前に置き「親父さんへの報告を頼む。息子さんは安らかに星に帰ったと伝えてくれ」と伝えた。


おまえっ! 何を考えている!?
はやまるんじゃねえ!!


私は必死に呼び止めるヴィルンズーンに無言で背を向けて、ゆっくりとヴォイドゲートの方に歩み始めた。それを見た入れ墨の男は、満足そうな顔をしながら私にむかって叫ぶ。


この先にある岬に船を用意させている。
それに乗りな。このガキを救いたきゃ、船が着いた先であんた自身に与えられた「使命」を見つけることだな。
まあ俺自身なんのこっちゃな話だが、あんたとこのガキが背負わされた「星の加護」の意味を知るものがそう言っていたぜ?まあ、その答えがこの星にとって「薬」なのか「毒」なのかはわからねえが、

第七霊災以前の記憶を失ったお前にとっちゃ、その記憶こそなにより大事なものだろ?


分かったようなことを言われながらも、私はその言葉に囚われてしまう。それに満足した黒い入れ墨の男は、


じゃあな! また会おう!
星に同じ運命を背負わされたものとして期待しているぜ?
あんたの成長、見届けさせてもらう!


そう言いながら魔獣の背に乗ると、魔獣は蝙蝠のような羽を大きく羽ばたかせて一気に上昇する。上がったところで岩の天井が待っているが、空中で器用に方向転換した魔獣は、ここからは見えない岩壁の奥に吸い込まれるように消えていった。
どうやらそこに外へと通じる抜け穴があるようだ。
ふとその岩陰に、アンホーリーエアーで出会った紫色のローブを来た仮面の男らしき姿が見える。
表情は分からない。だが、そいつもまたこちらの様子をうかがっているだけのようだった。


あなた! 何を惑わされているの!?
自分がしようとしていることが分かっているの!?


後ろから幻術士の女の叫び声が響く。
それでも私は幻術士の女の声を無視して、ヴォイドゲートの脇を抜け、目の前に広がる岬の先へ向かって歩み始めた。

ふとヴォイドゲートから一体の妖異が出現する気配。
しかしそこから出てきた妖異は、旅の始まりとなったウルダハでであった妖異程度。

私は振り向きざまに斧を振り下ろし、妖異を一撃で両断すると、ヴォイドゲートごとふっと消えた。所詮足止め程度だったのだろう。それを確認するとローブの男も自ら開けたヴォイドゲートの中へと消えていった。

私は岬に用意されていた、機械の塊のような船に乗り込む。
すろと、誰も乗っていないはずなのにスッと動き出した。
何を動力としているかもわからない、誰が操舵しているかもわからない不思議な乗り物。それはひょっとしたらガレマール帝国のものなのかもしれない。

 

私は改めて覚悟を決めて、旅立ちを決意する。

人であることを捨て、人ならざるものとして生きる運命を。

私は星を救う者か、それとも星の意思にあだなすものか。

すくなくとも、その答えはあの少女にある。

私は自分を知り、再びあの少女と出会うことによって、

すべての記憶を取り戻す。

待ち受けているのがたとえ絶望だとしても、


もう後悔はしない。


私は手にしたすべてを捨てて、新たな船出に向かって顔を上げた。