FINAL FANTASY XIV SS

FINAL FANTASY XIV を舞台とした創作小説です。

第二十六話 「フロンデール薬学院の青年」

フロンデール薬学院が開いている病院に担ぎ込まれてからはや数週間。
襲撃者の毒の解毒薬とワクチンが完成すると共に、私も晴れてお役御免となり退院することとなった。
解毒薬については、人の精神を侵す「毒」の解毒には成功したものの、剣術士を狙うという「令呪」の仕組みについては専門外ということもあり解明には至らなかったらしい。
フロンデール薬学院側は呪術師ギルドに解明を依頼したが、呪術師ギルド側があまり乗り気ではなく、有耶無耶のうちに解明作業は解毒薬の開発により打ち切られたとのことだった。

両団体の確執は、一方は呪術・もう一方は冶金術という、相反する「技」の追及を行っているためか、常に意見が合わず下部組織であるギルドも含めて広がっている。
昔に比べると大分薄まってきているものの、完全和解までには至っていない。

 


この服を着るのも久しぶりだな・・・

 

病院から与えられていた患者衣を脱ぎ、昔着ていた装備に袖を通す。
私が着ていた防具一式は「邪魔」という理由で見舞いに来ていた剣術士ギルドの者に持ち帰られ、代わりに宿屋の自室にしまってあった一着の服を持ってきてもらっていた。
鎧や武器を取り上げたのは、解毒と共に失われたと思われた「礼呪」が、何かのタイミングで発動し、再び自我を失って暴れだした時のことを考えてだろう。

病棟の出口から外へ出るとあたり一面は装飾され、きらびやかなイルミネーションと共に赤い服を着た人たちが楽しげに談笑していた。

・・・・これが星芒祭ってやつか?

星芒祭については噂程度に聞いたことがあった。
確かイシュガルドだったか、雪の降る中、戦乱で親や住むところを失い、夜空の星を数えながら寒さに震え、路上生活を送っていた孤児達に兵士たちが外套を着せて兵舎に招き入れたことを由来とするお祭り・・・・・だったような・・・。

そんなことを考えながら、装飾された街路をきょろきょろしながら歩いていると「どんっ!」と誰かにぶつかってしまった。


ああっ!! すみませんっ!!


ぶつかってしまった青年は私が謝る前にぺこぺこと謝ってきた。
ゆったりとしたフロンデール薬学院のローブを身に纏っているが、それでもわかるほどに線が細い背の高い人物だった。もともと体が弱いのか顔色も若干血色が悪い気がする。

私もまた青年に謝りそのまま歩き去ろうとしたが、私が病棟から出てきたことを知った青年は「ちょっとまってもらえませんか!」

と声を上げて私を呼び止めた。

突然呼び止めてしまって申し訳ありませんでした。
あなたはひょっとしてキヴロン別宅跡を根城にしていた盗賊団を撃退した冒険者の方ではありませんか?

 

私は突然のことで虚を突かれて受け答えに詰まってしまった。
あの盗賊団殲滅作戦はごく一部の人間しか知らないはずだ。ましてや不滅隊の隊員ですらない私があの作戦に関与していることを知っている人間は数少ない。
それなのに、無関係なフロンデール薬学院の人間がなぜ私のことを知っているのか・・・・
疑問が疑念に変わり始めていた時、

あぁっ!! 突然のことですみませんっ・・・
先輩から聞いていた容姿とおんなじだったものでつい聞いてしまいました。
もし違ったら別にいいんです。忘れてください!!

そう言いながら、薬学院の青年は慌てていた。
私は「失礼だが、あなたの先輩というのは誰なのか」と聞くと、青年はポリポリと頭を掻きながら「セヴェリアンです。錬金術師ギルドのギルドマスターの」と答えてきた。

・・・・・セヴェリアンはあの一件を知っていた?
あの一件に錬金術師が関係していた・・・・ということか?
だが、あの盗賊連中と錬金術師ギルドとが結びつくようなことは何一つないはずだ。
だからこそあの一件のこと、そしてそれに私が参加していたことを知っていることが不自然でならない。
セヴェリアンへの疑念は「ひょっとしたら私は知らず知らずのうちに籠の中に閉じ込められていたのかもしれない」という不審へと変わっていった。
そんな剣呑な雰囲気を感じ取ったのか、


説明が足りずにごめんなさい。
別宅跡には今はもう屋敷の残骸しかなかったとはいえ、盗賊団が住み着いたあげくに「キヴロン」の正統な後継者を名乗りだす始末で・・・当院としては頭を抱えていました。
誰も信じる者なんていなかったけれど、フロンデール薬学院としてはやはり体裁的によろしくなかったので砂蠍衆の方々に対処を願い出ていたんです。
そしたらロロリト殿が手を挙げてくださって。ラウバーン殿も協力を申し出てくれたのですが「野盗如きの対処は銅刃団だけで十分」と頼もしいことを言ってくれたのです。

薬学院の青年は嬉しそうに話を続ける。
それにしてもロロリトや不滅隊のラウバーン局長と直接話をしているこの青年は、どうやら普通の者ではなさそうだ。


そして銅刃団との共闘をかって出た冒険者と共に、盗賊団は懲らしめられたとお聞きしてました。私はその冒険者の方にお礼を言いたかったのですが、どういう方なのか全く情報がなかったのです・・・・が、私の師匠でもあるセヴェリアンが「盗賊団の殲滅に関わった冒険者がうちに来ている」と話をしていたもので、いつかお会いしたいと思っていたのです。
こちらに来ていただけるようにお願いできないかとセヴェリアンにお願いしたのですが「面倒くさい」と一言で一蹴されてしまうし、私も勝手にここを離れることもできないので・・・

もしあなたがその冒険者の方であるなら、ぜひお礼をさせていただきたいのですが・・・


青年は改めて私が盗賊団の殲滅に関与していたかを確認しながら申し出てきた。
私は盗賊団殲滅への関与を認めたが、礼についてはやんわりと断った。
剣術士たちへの病院の解放と、毒の治療を行ってくれただけでも私は感謝で胸がいっぱいであることを伝えると、青年は恥ずかしそうに笑った。


本当はこの病院ももっと幅広い人たちに利用してもらいたいのですが、施設の規模が手狭で誰でも受け入れてしまうとすぐにいっぱいになってしまうのです。
それにフロンデール薬学院の規模も大きくなってしまって運営に多額のお金が必要となる上、施設の管理維持費も馬鹿にならない・・・結果として医療費が上がってお金持ちの方ぐらいしか利用できない病院となってしまっています。
将来的には新たに病院を作って、市民の方にもっと気軽に利用できるようなものにしたいと思うのですが・・・現実はなかなか厳しいですね。


と青年は大きく落胆していた。
私は青年の身分が気になり、名前を聞こうとした時、


あっ! ロロリトさん!!


青年は突然声を上げて私の後ろに目線を変えた。
ハッとして後ろを振り向くと、そこには身なりの整ったララフェルの男と、その男を警護するように銅刃団の男が立っていた。
ロロリトと呼ばれたララフェルの男は、その小さな体躯に似合わず圧力を感じるほどの存在感があり、情けない話だが私は立ちすくんで動けなくなってしまった。

こいつが・・・

青年とロロリトは親しげに何か会話をしていたが、

 

そうだっ! ロロリトさん。
ここにいる冒険者さんが盗賊団を撃退してくれた方ですよ!


と、突然話の矛先をこちらに向けてきた。


・・・・ほう。そなたが・・・・


顔当てのせいで表情を読み取ることはできないが、ロロリトはこちらを「確認」するようにじっくりと見てくる。その間中私はまるで蛇に睨まれているカエルように固まって動けなくなった。

・・・・これは・・・まずい・・・。

ロロリトは私の存在を知っていただろうが、それは話の中だけで顔まではわからなかっただろう。しかし今、この青年によって強制的に顔バレしてしまったことに得体のしれない恐怖が湧きあがってくる。


そうかそうか・・・・冒険者殿、貴殿の活躍はよく耳にしていたのだ。
このウルダハには各地から金目当ての無法者が集まり、徒党を組むものが多くてな。
商隊を無差別に襲うわ、要人を誘拐しては身代金を要求してきたりと治安維持に苦慮していたのだ。
手に職を与えれば犯罪に走らんだろうと「銅刃団」を作り雇用したのだが、元々が無法者だからな・・・・欲に目がくらんで犯罪集団に組み入る輩も後を絶たんのだ。

だが、そなたのおかげで大分団内の粛清も進んだ。
これからの銅刃団を担う人材も発掘できたことに感謝しよう。
これからもウルダハの平和のため、尽力願えることに期待しているぞ。

ロロリトが私にそう言いうと、青年は嬉しそうに手を叩いて喜んでいた。


どれ、わしは先を急ぐでな・・・ダミエリオー殿、失礼する。


そう言いながらロロリトは軽く礼をした後、去って行った。


さすがは冒険者殿!
あのロロリト殿から一目を置かれていたなんて素晴らしいことですよ!
やはりあなたの噂はウルダハに轟いていると見える。
人嫌いのうちのセヴェリアンですら気に掛けるだけはありますよ!


と、ロロリトにダミエリオーと呼ばれた青年は興奮した様子だった。
・・・ダミエリオー・・・まさかフロンデール薬学院のトップで、砂蠍衆の一人のダミエリオー本人だったとは。それはロロリトやラウバーンと面識があるのもうなずける。
エオランデ=キヴロンの息子であれば、キヴロンの名を語る盗賊団の存在は腹立たしい限りだったのだろう。


ダミエリオー理事長!! 会議の時間です!!


慌てて院内から飛び出てきた薬学院の職員と思われる者に声をかけられると、ダミエリオーは「はぁ~~っ」と深いため息をついて「会議したところで何の解決にもならないんだけどなぁ・・・」とブツブツ言いながら、


それでは冒険者殿。ここで失礼いたします。
またいずれお会いできることを楽しみに、あなたのご活躍を願っております。
なにかありましたら遠慮なく当院をご利用ください。
わたしから口添えしておきますので。

とダミエリオーはウィンクをしながら、深々と礼をして去って行った。


ダミエリオーはとても気持ちのいい青年だった。
この世の中の「闇」に染まっていないような純さがあり、願わくばそのままの彼でい続けてほしいと願うばかりだ。
・・・・しかしロロリトに面が割れてしまったことに心の動揺が収まらない。
もし自分の身を守るのであれば、これ以上銅刃団がらみの件に首を突っ込むのはやめておいた方がいいかもしれない。団内の粛清と再教育が行われていると言っていたので、前ほどではないとは思うが・・・。

歩廊でそんなことを考えていると、


冒険者殿!!


とまた誰かに声をかけられた。
その声には聞き覚えがあり、声の方を向くとそこにはフフルパが元気よくぶんぶんと手を振っていた。

 

お久しぶりでありますっ!!!


歩廊に響き渡るような大きな声を出すや否や、パタパタと駆け寄ってくるフフルパ。

まるで犬みたいだな・・・

なんて失礼なことを思いながらも、私もフフルパに挨拶をする。
久しぶりの再会にテンションが上がっているのか、見ただけでわかるように体全体で嬉しさを表現していた。


変わりなくお元気そうで何よりでありますっ!!
冒険者殿もこちらにご用向きとは、もしかして剣術士の襲撃騒動で呼ばれたでありますか?


私はフフルパの問いに一瞬詰まり、言おうかどうか考えたがフフルパに隠していても仕方がないので、襲撃者の毒にやられてしばらく病院に入院していたことを説明した。


こ・・・これは失礼いたしましたっ!
冒険者殿も巻き込まれていたとはっ!! お体の具合はもういいのでありますかっ?


恐縮するフフルパに「もう治ったから大丈夫」と話すと、ホッと胸をなでおろしたようだった。


今回の事件で銅刃団もてんてこ舞いなのでありますっ!。
西ザナラーンについては我々ローズ隊を中心に厳しく見張っている故、リムサ・ロミンサ側からは不信な奴らは入国していないのもあって、他の地域に比べれば被害は少ないのでありますが、多分グリダニアや東方面からの流れ者が多い中央ザナラーンや南ザナラーンは警護の人が不足して困っているのであります。

特に南ザナラーンではウルダハへの移住を最後の希望としてアラミゴから逃げてきた人達が、希望を失って野盗に身を落としていると聞いているであります。
最近だとアラミゴ王室の残党である骸旅団の元に小規模の犯罪集団がどんどんと合流していて、さらにアマルジャ族の連中と結託してウルダハへの侵攻を企んでいるという噂もあるでありますっ。
そのせいもあって、いま南ザナラーンにあるリトル・アラミゴという拠点にたくさんの銅刃団の人員が移されているため、他の地域の人員が足りていないであります。不滅隊の方からも支援要請があるのですが、集落を守るだけで精一杯なのでありますっ。

今回の剣術士の襲撃事件と骸旅団の活発化との関係性を結びつける証拠はまだ見つかってないでありますが、おそらく関係していると思って間違いないとみんな言っていたのでありますっ。


一地域の守護を行っているフフルパにしては、今回の一件について随分と詳しい。
特に銅刃団は、下の連中にはあまり情報が流れないのが常だったような気がする。
そもそも、なぜフフルパはウルダハの中心部であるここ政庁層にいたのだろうか。
私はそのことが気になってフフルパに聞いてみた。


自分がここにいる理由でありますかっ?
それは先ほどまで行っていた剣術士襲撃事件の対策会議に参加していたでありますっ!
お、お恥ずかしながら自分、西ザナラーン全域を守護する銅刃団の長にロロリト様から直々に任命されたのでありますっ。

自分めにその大役は役不足であると言ったのでありますが「お前のようにまっすぐな志を持つものが今の銅刃団には必要なのだ。私を助けるつもりでこの大役、請けてはくれぬか?」
ともったいないお言葉を頂戴した自分は舞い上がってしまって「命に代えてもこの任、果たしてみせますっ」と勢いで答えてしまったのであります。

てへへっと恥ずかしそうに頭をかくフフルパ。
そんなフフルパに「フフルパ殿が西ザナラーンを見てくれているのであれば安泰だな」と話すと「ぼ、冒険者殿まで! 自分にそんな実力ないでありますっ」と手を体の前でぶんぶんと振りながら謙遜していた。

それにしても、フロンデール薬学院のダミエリオーやフフルパの話を聞いていると、ロロリトという人物について偏った見方をしていたのではないかと思い始めていた。
確かに銅刃団絡みの事件が続いたこともあり、その黒幕であるロロリトの行動すべてが悪意に満ちていると思い込んでいたが、実際に直でそれを目の当たりにしたわけではない。

・・・いやいや・・・レオフリックの一件、そして斧術士の件、シルバーバザーやクレセントコーヴの置かれている状況を考えれば、一時的に態度を軟化しているに過ぎないのか・・・。

考え込んでいる私に、


冒険者殿っ! この後お時間はございますかっ!!
冒険者殿とお話ししたいことがまだまだたくさんあるのでありますっ!
先日の一件のお礼も兼ねて、クイックサンドで食事でもご馳走させていただきたいのでありますっ!

正直なところ、私が入院してから一度も顔を出さなかったミラのことが気になり、剣術士ギルドへと足を運びたかったが、最高潮に達していたフフルパのテンションに圧倒されて断ることもできず、私はそのままフフルパとクイックサンドへと向かった。

 


クイックサンドに着くと、フフルパは食べきれないほどの料理を注文し、4人掛けのテーブルが料理で埋め尽くされた。
しかし私の心配をよそに、フフルパはその体に似合わずむしゃむしゃと料理をおいしそうに平らげていく。そのペースは一向に衰えることなく、私が満腹感を感じるころには料理のほとんどが無くなっていた。


やはりウルダハに来たらクイックサンドの料理を食べずにはいられないでありますっ!


と、微塵にも苦しそうな感じも見せないどころか、まだ食べたりないといった様子すらあった。


お粗末様ね。


と、空いた皿を下げに給仕とともにモモディ女史もテーブルに近寄ってきた。


あっ!! モモディさん!! 今日の料理はいつも以上に美味しかったであります!

うふふっ、いつものようにすごい食べっぷりね。
それにしてもこれだけの料理、一体どこに納まっているのかしらね?


そういいながら、口のまわりをソースまみれにしているフフルパの口元を布で優しくぬぐった。その姿をはたから見ているとララフェルの親子のほほえましい光景に見えるが、フフルパもまんざらではない様子で頬を染めながらもモモディの優しさに身を任せていた。


ずいぶんと珍しい組み合わせだけれど、今日はあなたの退院祝いかしら?


モモディ女史の問いに「盗賊団撃退のお礼もかねてなのであります!」と嬉しそうに答えていた。


食後、ゆっくりと酒を飲みながらフフルパと色々なことを話した。
バルドウィンのその後のこと、レオフリックのこと、クレセントコーヴのこと。

いろいろ話していて感心したのは、細かいところまでしっかりとみていることだった。
思慮深さという部分に関しては期待できないが、表裏のない真っ直ぐな姿勢を見せることは、相手を信頼させるには必要十分であろう。
フフルパの頼りない部分も含めて支えてくれる人の輪が広がりさえすれば、何が起きたとしても団結が生まれる。

ロロリトさえ裏切らなければ・・・だが。


ふとフフルパは会話をやめた。
どうやらひとつのテーブル席に目を奪われているようだった。
フフルパの目線の先を追ってみると、そのテーブルには全体的に紫色の衣服に包まれたものたちと、海賊のような服をきたもの、そしてその場に似つかわしくないようなララフェルの子供(?)が座っていた。


私はフフルパに「あの子のような子が好みなのかい?」と聞くと、酒で赤くなった顔を更に赤くしてフフルパはぶんぶんと顔を横に振った。


ち、違うでありますっ!!
私はモモディさんひとす・・・・・あ、あわわっ!!
今の話は聞かなかったことにして欲しいでありますっ!!


酒の勢いを勢いに乗せて思わず口走ってしまったようだった。
先ほどのモモディとのやり取りで母親と息子という印象を感じていたが、フフルパとしては恋人とのやり取りを感じていたようだ。
私はニヤニヤしながら「そうかそうか・・・フフルパ君の好みはそっちだったか」と話すと、フフルパは顔を伏せて口を噤んでしまった。

恥ずかしがるフフルパの姿を見ているのも楽しいが、あまりいじめてもかわいそうなので、あのテーブルのどこが気になるのかを聞いてみた。


いえ・・・剣術士の襲撃事件で、手練れの剣術士達ですら襲われているのでありますが、毒に侵されずに逃げ切った者の証言によると相手は紫色一色で身をまとめたものだったということだったのであります。
それであの者達が気になったのでありますが、ここは冒険者ギルド・・・・あの程度の服飾の者などありふれているといえばそれまでなのですが・・・。


フフルパの言葉に促されるように私もその者達を横目で見てみると、ふと違和感を覚えた。
今までああいう服装をしたものをいっぱい見てきているはずなのに、ごく最近もっと真直で見た気がするのだ。
もちろん直近の記憶を探ってみても覚えはない・・・・もしかしたら、毒の影響で失った記憶の中で対峙していたのかもしれない。
ただ、あの者達がそうであると確証できるものは何一つないのだが・・・。


あと・・・・ですね・・・


考え込む私をよそに、フフルパは小さな声で話を続けた。


実は私には妹がいまして、あそこに座っているララフェルの子・・・なのでありますが、ちょっと似ているなぁと思っていたのであります。
最後にあったのはかなり昔でありますし、そもそも髪の色も顔の色も全然違うのでありますが・・・・なんとなく雰囲気が似ていて気になったのであります。


フフルパは照れくさそうに、また懐かしむように話し続けた。


自分の故郷はイシュガルドとシャーレアンの間にある、どちらにも属さない小さな集落なのであります。
その昔は蛮神すらも使役していたほど強力な魔力を持つ召喚士一族の住む村だったらしいのでありますが、エオルゼア全土を巻き込んだ昔の霊災の時に、各地で起こった魔大戦の元凶を抑え込むために一族は力を使い果たしてしまい、その後は歴史だけが受け継がれる村となっていったのであります。

今となってはその伝承すらもこの世界から忘れ去られてしまって、過去だけにすがる集落だったのであります。
自分はそれが嫌で集落を飛び出してここウルダハまで来たのでありますが、その時自分になついていた妹を残して行ってしまったのであります。

人見知りの激しい子だったのでずっと心配していたのですが、ちょっと似ていたので思い出してしまったのであります。


フフルパは恥ずかしさを隠すように酒の入った器をグイッと仰いだ。
その時フフルパの懐から一通の便箋のようなものが飛び出し、パサリと床に落ちた
私はそれを拾ってフフルパに渡そうとしたが、フフルパはその便箋をじっと凝視したまま動かなくなった。
私は不思議に思いながらもフフルパがその便箋を受け取るのを待っていたが、フフルパは持っていた器をテーブルにどんっと置き、意を決したように私に向かって言った。


冒険者殿っ!
折り入ってご相談があるであります!!